耽溺~Tan-deki~

人類の聖書―多神教的世界観の探求

ジュール・ミシュレ / 大野一道
  • 序文
第一部 光の民
1 インド
1 『ラーマーヤナ』
善意の聖書
インドの天分の隠された玄義
2 どんなふうに古代インドは再発見されたか
アンクティルとインド学者たち
『ヴェーダ』の出現
3 インドの技術――1851年の展覧会
カシミア
象の飼い馴らし
4 原始インドの家族――最初の宗教
暁の歌
一夫一婦制
【婦人】
彼女は供犠に、讃歌に協力する
神々と対等の立場の人間
5 インドの深遠なる自由
『ラーマーヤナ』は解放である
6 自然の救済
復権され人間化される動物
限りない許し
2 ペルシア
1 大地、生命の水
雄々しい農業
正義の中の光みちた生命
「火」、「大地」、動物を正しく評価する
水を呼び出し大地を肥沃にする
生命の水
ホーマ
木=光=言葉
「言葉」によって人間は世界を支え生み出す
2 善と悪の戦い、最終的許し
イラン対トゥーラン
アッシリアの竜
労働、秩序、正義
水の正しい分配
オフルマズド対アフリマンの宇宙的戦い
あらゆる良きものは、オフルマズドがアフリマンを打ち破り、まっとうなものにするように
3 翼をもった魂
自らの魂を讃える
来世へと移行する魂に対する不安
太陽は死体を呼吸し、鳥は魂を拾いに来る
魂は天使に迎えられ(その生命は変貌す)る
4 ワシとヘビ
竜の君臨
解放者としての鍛冶屋
ワシがバビロンに侵入する
ワシはアジアの魂として留まる
5 『シャー・ナーメ』――強い女
泉への崇拝
ペルシアのホメロス、フェルドゥーシー
家族の伝統
夫婦愛
フェルドゥーシーの生涯と不幸
3 ギリシア
1 インド、ペルシア、ギリシアの緊密な関係
ギリシアはサラミスで世界を救い、ルネサンスで世界を復興させる
ギリシアの変革と教育の天分
2 母なる大地、デメテルあるいはケレス
ペラスゴイ人の聖なる神秘、【大地の魂】
インドの優しさ、血への嫌悪
母の【受難】
ケレスの伝説の汚れなさ
花の祭り
法の祭り
ケレスは都市を創り、「不死」を教える
3 イオニアの神々の軽やかさ、人間の家族の力
ギリシアは反祭司的である
神々の階梯(火、大地、水、空)
神々の教育、神話から神話へ
ギリシアの高邁で軽やかで汚れない生
本来的家族は、そこでは『ヴェーダ』の家族とほとんど違わない
男と対等で、論争の裁き手である女
4 都市の創出
ギリシアの晴朗、その雄々しいほほえみ
体操的な汚れない戦い――いかなる奴隷もいない
ギリシアはドーリア戦争で、ヒロテ、クレロテ等の厳しい隷属で翳らされる
運命の神、モイラ、ネメシス
救い主プロメテウスは「都市」だった
5 教育――子供――ヘルメス
アテナイは市民、英雄、【人間】を一度に形成する
自由、活力、幸福の教育
ヘルメスは子供に翼とリズムを与える
ギリシア語の奇跡
6 アポロン――光――調和
デルフォイ
その彫像の地上楽園
どのようにしてアポロンは人間化され神化されたか
野蛮な笛対竪琴の戦い
デルフォイの平和をもたらす競技
アポロンにおけるギリシアの高度の調和
7 ヘラクレス
ヘラクレスは竪琴に賛同し、バッコスの笛に反対する
「働くこと」と「働く者」
ヘラクレスは大地を服従させ加工する
この神話がいかにホメロスを凌駕しているか
私生児、末っ子、奴隷――世界の犠牲者にして恩人
彼はギリシアを平和にし、悪者と河とを制圧する
大地全体に歓待の権利を基礎づける
神々の嫉妬
バッコスはケンタウロスを武装させる
ヘラクレスは地獄に行くよう強いられる
彼はアルケスティスを連れ戻す
意図せざる罪
隷属状態
彼は能動的、活動的【受難】の典型を残す
8 プロメテウス
兵士であり、厳しい批評家であり、預言者であるアイスキュロス
アテナイの破格の栄光に包まれ、彼は予感で頭がいっぱいだ
新しい芸術
バッコスの君臨
【若い】神々と差し迫った専制とに反対するアイスキュロス
アイスキュロスは、圧政者ユピテル=バッコスに対して、「正義」の息子プロメテウスを反=圧政者として喚起する
プロメテウスはストア派哲学者と法律家とを予告する
ギリシアは戦争によっても、奴隷制によっても、悪い風俗習慣によっても滅びはしない――家庭の衰弱と女の孤独(サッフォーの例)によって、そしてオリエントの神々の苛立たしい侵入によって、滅ぶのである
第二部 夕闇、夜、薄明の民
1 エジプト、死
死の巨大な重要遺物
生の大河
壮大なハーモニー
すべての者はそれを模写した
イシスの善意
祭壇上の家族
オシリスの死
イシスの服喪(永遠の真実の物語)
愛は死よりも強し
オシリスは彼女のために戻ってくる
愛する対象に結びつく、排他的で極めて個人的な愛
イシスは暗殺者の息子アヌビスを養子にし授乳する
アヌビスは技術を創り、死者を導き安心させる
エジプト人の厳しい条件
その惜しみなく与える生活
その悪霊への恐怖
木は彼のために心なごみ、託された彼の心を受け取る
サトゥの物語(モーセ時代の話)
2 シリア、フリュギア、無気力
みだらな理想
女=魚=鳩
アスタルテとモロク――売春、去勢
近親相姦の伝説――セミラミス、ロト、ミュラ
セミラミス――バベルのマギ、女=妻
埋葬のディオニュソス信仰的狂乱
アドニスの近親相姦的で葬儀を思わせる誕生
アドニスの死――服喪と復活
【アドニス祭】の巨大な影響
男性的力の消滅
バビロンの歓待
マギ的女王たち
偶像【母】と神との不純な統一
キュベレの聖職者――その教皇たち――古代世界のカプチン会修道士、その托鉢僧たち
3 バッコス=サボス、その化身、僭主
オリエントの神々の侵入
バッコス的、プリアポス的魂
ペオルのバアール
バッコス=サバジオスとその【受難】
それはエレウシスを支配し【仲介者】となる
愛の仲介者【饗宴】
僭主と奴隷の神、征服者バッコス
女たちのバッコス祭的乱痴気騒ぎ
4 続き――サボスの化身 軍事的バッコス祭
オリンピアスは、ヘビのサボスからアレクサンドロスを宿したと主張する
アレクサンドロスは野蛮人の外見と性格を持った
その遠征はずっと前から準備された
彼はアキレウス、キュロス等を演じる
傲慢と忘恩――彼は自らを崇拝させる
カリステネスの抵抗(【活力の哲学】)
新しいバッコスの再来――それへの乱痴気騒ぎ
彼の話はメシア待望論にはずみをつける
マギたちは君主制のしきたりを立案、それがこれ以降模写されていく
5 ユダヤ人、奴隷
ユダヤ人とシリア、フェニキア、カルタゴとの血縁関係
ユダヤは、なりふりかまわず住民を引き寄せた
ユダヤが外国人と奴隷とに開かれた【避難所】であったというあかし
平和的で投機的なユダヤ人の性格
ユダヤ人は奴隷のため息を不滅のものにしたという栄光をもつ
夜の歌
砂漠の精霊、復讐者エホバ
『聖書』における二つの宗教、エロヒムとエホバ
これら二つの信仰を純化するための預言者たちの努力
ユダヤ人は自らを【選ばれた者】と信じる――神はユダヤ人にすべてを許すだろう
神は卑しき者や罪ある者を愛する
「法」の雄々しい面が、「恩寵」の女性的教義を覆い隠す
エレミアとエゼキエルは【罪の世襲】に反対し、「正義」を求め声高に叫ぶ
捕囚
小さな用心についての金言
『聖書』は大いなる体験を示す
すばらしい物語
想像上の虐殺
乾いた炎
パリサイ派の無味乾燥
カバラの無味乾燥
([注] ユダヤ人の様々な功績 ユダヤ人は内的自由の感情によって立ち上がる【最良の奴隷】である)
神秘主義の奇妙にまじったアルファベットへの崇拝
6 女、世界
「雅歌」
そのシリア的淫蕩の性格
そのユダヤ的繊細さと激烈さの性格
七つの悪霊への娘の至上権
快楽と同じく辛い仕事にも通じたシリア女
男の内気な慎重さ
一般的無気力
物語の到来
ユダヤの物語
「エステル」は、当時至る所に広がっていたシリア、ユダヤ、ギリシア=フェニキアの女たちの、一般的な物語を伝える
彼女たちは売られ、また賃貸される
オリエントの神々への彼女たちの愛着
ローマの既婚女性も同様である
死の神々(エジプト等の)がローマに侵入する
7 女とストア学派の、法と恩寵の戦い――ローマにおける
イタリアの天分
それはまずオリエントを拒絶し、カルタゴを破壊する
ストア哲学
法律学の飛躍的発展
法律学は、消耗し衰弱した世界を見出した
それは自らの敵、「女」や母に、つまりメシア信仰の主導者に、有利になるよう働いた
8 女の勝利
キリスト教はマリアから生まれた
369年まで女は祭司だった
いかにしてマリアからイエスは生まれるか
『プロートエヴァンゲリウム』、(マリアの)【原始福音書】
[エルサレムの]神殿とシナゴーグとの闘い
ラビたち
イエスは自らしか教えない
三人の女が伝説を始める
『プロートエヴァンゲリウム』によるマリアの生涯
イエスを取り囲む女たち
マグダラのマリア
パウロを取り囲む女たち
テクラ、リディア、フェべ
「恩寵」の「法」に対する宣言、「ローマの信徒への手紙」
フェべはこの書簡をローマへ、ネロの宮殿へ持ってゆく
際限ない服従の教義
ネロの二重の性格
フェべがストア派哲学者と法律家に対して、行ない続けねばならなかった闘い
四世紀にわたる女=祭司の力
9 世界の衰弱、中世の粉砕
死を待つこと
無気力
野蛮人に開かれた帝国
帝国はミトラをイエスに対立させる
文学的無気力、ヘルマス
自然への憎しみ、父親の軽視
ヨセフの痛ましい福音書(ファブリ・リグナリィ)
予定説とあらかじめの劫罰
中世の粉砕
結論
もはや批判せず、(さしあたり)中世を忘れること
未来に向けて歩み、真に【人間的な方向】をとること
【深い信仰】が築かれる、というのも「科学」と「意識【=良心】」が理解しあったからである
いかにして新しい道において、揺るぎないものとなるか
  • 訳者解説――『人類の聖書』、あるいは神々と人類の照応史
  • 索引